合掌:D・キッド死去

あなたの思うベストレスラーは? と聞かれたら、レスラーにベストはあり得ません。なぜなら比較するべき軸がないから。そもそもベビーとヒールを同列に評価するわけにいかないでしょう、と返すと思う。

だが、あなたが「一番好きなレスラーは?」と聞かれればその答えは決まっている。「あなたが勇気をもらい、その試合に心を揺さぶられ、人生観にも影響を受けたようなレスラーは?」間違いなくこの人しかいない。Dynamite Kid. My hero.

昨日、60歳の誕生日を迎えた日に亡くなったそうだ。

https://local12.com/news/entertainment/report-ex-wwe-superstar-dynamite-kid-dead-at-60

多くの人が追悼し懐かしむだろう。ジュニアなのにパワフルかつスピード感とキレのある動き、激しい攻めと激しい受け身、そして、ダイビングヘッドバットという攻撃する側も受ける側も同じダメージを負う技を「避けられることを前提に」対角線反対側ポストから仕掛けるという独特のファイトスタイル は、プロレスリングの歴史の中でも異様な輝きを放っている。全く合理的でないことを、自らの身を削る説得力で真実へと化学変化させる…後に日本スタイルプロレスの「売り」になっていくハードヒッティングスタイルの元祖にして至高の存在。

頸椎を痛め、晩年は半身不随となっていたことが何度か紹介されたが、それすら、プロレスというショーの果てしない残酷さをありありと見せつけてくる彼のプロレスだったようにさえ思う。それで60まで生きるのは、これまでのどんなバンプよりもっとハードじゃなかったか。キッド。

生きるということ、戦うということ、孤独ということ、プライドということ。いかにも寡黙な彼に、本当に色々なことを教わった気がする。こんな人がいた、という事実が、今でも生きることへの勇気を与えてくれる。

ありがとう。ダイナマイト・キッド。あなたの試合を見ることができて本当によかった。あなたと同じ時代に生きることができて光栄でした。どうか安らかに。