のまネコ問題はavexの危機管理体制を顕わにした

今回の一件で、avexという会社は単にその商道徳の面における問題だけでなく、むしろ「消費者の声を聞く能力」が欠如しており、そして「危機が起こったときの対応力」が欠如しているという二つの面の欠陥を明らかにしたことが問題なのではないかと考える。
なぜなら、これらは実は同じ欠陥のそれぞれ別の側面を示しており(つまり市場から情報を収拾し、それを分析し、分析結果をきちんと具体的な戦略に結びつける企画力と、それを実行する決断力……それらは、事前のキャラ展開企画段階におけるトラブル予測においても、そして一端トラブルになったときの対処の現場においても、重要な能力になるはずだが、今回avexはそれらのシステムのいずれか(あるいは全部)に明らかな滞りがあることを露呈してしまった)、そしてその「同じ欠陥」とは、「流行を読み生み出す会社」としては致命的な「情報を支配し活用するという問題への対応の遅れ」を意味している。
というのは、今回行われたavexのいくつかの対応策は、今日的なレベルで見るといずれも信じがたいほど稚拙で、高度に進化した現代の情報化社会に対する驚くべき無知を示しているからだ。特に

「サイトへの圧力」→規制の少ないプロバイダに移ってミラーサイトの群れを生んだ
「自社アーチストのブログへの圧力」→会社イメージを決定的に悪くした
「クレームへのレスポンスが遅く公式見解の文面もロクに推敲していない」→却って騒ぎの火だねにさえなった
「『社員の発言』として雑誌に紹介された発言が、ことごとくバラバラ」→混乱を招き、悪意ある噂の拡散に寄与した

……などの対応は、対応次第では全く違った効果をあげることが出来たはずであり、要するに現在インターネットの世界でどのような事態が進行しているかという状況に対応できていないということである。こういう対応しかできなかったということがそもそも担当者の無知、もしくは命令責任者にきちんと情報があがっていないというシステム上の不備を意味しており、いずれにせよavexという創業わずか数年の会社が、高度に情報化された現代社会に比してもはや完全に時代遅れの企業になりかけているということを意味していることが今回最も見過ごせない問題だったと言える。
これは、これまでavexが顧客にしてきた主要な層がインターネットの主たる市民層と重なりが少なかったせいかもしれない。しかしインターネットはこの数年でますます身近なものになり、かつてavexが主要な客層としてきた層にまで浸透し始めている。思えばCCCDという規格は、加速する情報化社会についていけないというavex側からの悲鳴のような規格だったのではあるまいか。
avexという会社に取っては、今回の問題…というより、今回の問題への「対応のまずさという問題」こそが最大のイメージダウンだったと思う。