スーパー耐久レース

近所に新しいスーパーが開店しました。今日初めて行ったのですが、中身はほとんど変わらず。しかしここに至るには、一年に及ぶ熾烈な争いがあったのです。
まず初期状態。この近辺には大手スーパーのAとBがありました。どちらも客層はほとんど同じで、昭和的『庶民』向けの昔ながらの「スーパーマーケット」です。B店の方がやや店が狭く駐車場も少なく、安い。A店は駐車場も広く明るいがやや高い。そういう棲み分けでした。まとめ買いなどに対応する目的でしょうか、近所のドラッグストアCも、食料品や菓子・清涼飲料などの販売に力を入れていました。この状態が少なくとも数年続いていたわけです。ちなみに、A店とほぼ同じ店構えのDというやはり大手スーパーも近くにありましたが、これは全体にAを小さくした感じで、おまけに別の国道沿いに面しているので特に競合するわけではありません。
ところが一年前、B店がEというディスカウント系スーパーに店舗を売り渡して、そこから「スーパー耐久レース」が始まってしまったわけです!E…はディスカウント系なので、暗く狭い店構えをそれほど苦にせず、順調に客足をのばしました。

以上一覧するとこんな感じ。
A(大手スーパー。駐車場広い。値段普通高。)
B(大手スーパー。駐車場狭い。値段普通安。)→閉店し、Eに。
C(ドラッグストア。駐車場普通。値段普通。)
D(大手スーパー。駐車場普通。値段普通安。)
E(ディスカウント系。駐車場狭い。値段安。)

そこでまず最初に動いた(というか白旗を揚げた)のはドラッグストアCでした。本業の薬屋部門は別の大手系列に身売りし、食料品等売り場については大幅縮小……という形で、事実上「スーパー耐久」からは脱落です。
次に動きが素早かったのは、意外にも最も距離も遠く影響が少ないと思われたD店でした。こちらは、同系列の「高級志向」スーパーブランドへの転向をはかりました。従来このあたりにはなかった傾向のスーパーであることを考えると、やや客足が落ちたようには見えるものの、おおむね正しい一つの選択肢(ディスカウント系との競合を避けた)を選んだようです。
そして残るA店は最も対応が遅れていました。Eと最も近い場所にあり大きく客を奪われたのは間違いないのですが、広い駐車場などのメリットを生かしじわじわと巻き返しているかに見えていましたが、ついに先月「完全閉店」の貼り紙が。資本力のある大手Aだけに撤退の決断も早いなぁ……あそこの弁当うまかったのになあ…と思っていると、なんと実は撤退ではなく、『同グループのディスカウント系ブランドへの転向』だったことが判明。そう、戻りかけていた客足に勢い込んで、E店との真っ向勝負にでたわけですね。
これで逆に苦しくなったのはE店です。開店一年で、劇的な方針変更は難しい。かといって、このままでは広い駐車場を持つ新生A店にますます巻き返される事は必至です。そしてもちろんA店も決して楽観はできません。今日視察した限りでは、ハッキリ言って値段なんてほとんど変わっておらず、せいぜい商品の入れ替えをした程度(要するに安物商品の売り場面積を増やし、期限ぎりぎりの見切り品バーゲンを増やしただけ)なわけで、これが客にどう受け取られるかはまだ未知数です……。
というわけで、各店舗一周してまだまだ耐久レースは続く模様です。このレースにかかったエネルギーというのは、しかし、勝者が「元を取る」という形で、結局私たちが負担するわけですよえねぇ……。