広々した気持ち

…というのが、最近欠けているなあ、と思いました。id:hogemogepu氏(退会なさったようですが)の質問(question:1116070772)を見てあらためて。
彼の憤りというのはなるほど公憤であり義憤なのかもしれないけれども、それはとても狭い視野から見られた公憤であり義憤である、そして悪人よりも偽善者よりも危険なのは「自分で善人だと信じ込んでいる人」なわけですが「視野の狭い義人」ほどそれに近い存在は無いと思うのです。
質問中で、「多くの人が無自覚である」というのは、それは一々尋ねて聞いたのかそれともただそう思いこんでいるのか。仮に質問して、かつ相手が「無自覚だ」という返事をしたからといって本当に無自覚であるかどうかは分からない(「自覚がある」と返事することを拒んでいるだけかもしれない)。けれど彼はそれを当然の前提にして主張を組み立てています。
また、「樹木を切り裂き草花を千切り、動物を捕縛し隷属させ屠殺し、貧しき国から搾取し、か細き声を黙殺し、あらゆる賄いを受けながら空と海と土を汚して日々を暮らしている」がゆえに我々は罪深い…というのはなるほど聞きやすい意見ですが、『先進』諸国に生まれた人間は、そのアドバンテージゆえにそうでない国に生まれた人間より『自覚的』に生きなければならないという十字架を背負う、という考え方は、「先進国に生まれたことはアドバンテージである」という考え方を無批判に前提としており、それは容易に差別的かつ搾取的な考え方に転化しうる(我々/私は選ばれた人間である、的思考)危険性を持っています。質問者はそのことにあまりに「無自覚」なのではないでしょうか。
そもそも、多くの人が目にするしかも「質問」を行うべき場所でマナー違反と言うべき「意見表明」行為ができるのは、結局「自分のなす事は善だから、マナー違反も許されるべきである。まして私は退会するのだし。」といった被害者的特権意識があるからなのではありませんか。私はそれを非常に残念に思います。自分のしていることが正しいと思い、周囲にもそれを分からせようという気持ちがあるなら、正しいやり方で地道に努力すべきなのではないかと思います。そうでなければそれは特権意識に基づいた脱法行為としてのテロと同じことです。
本当にそれを強く考えているなら、黙ってその解決に向けて行動すればいい。真剣に周囲に訴え分からせたいなら、退会するべきではない。自分の正しさを主張したいなら、間違った手続きは取るべきではない。要するにやっていることが「泣き喚いている子ども」と同じで、目的と手段が全く一致していない。このままでは鬱憤晴らしか嫌がらせとしかみえません。
…とまあ厳しめに書きましたが、かかる彼の稚気は、基本的にはとりわけ批判するべきほどの物ではないと思います。現在、比較的多くの若者が似たようなことを考えているのでしょう。(同氏にはそのことにも気付いてほしいと思いますが。)にも関わらずここで取り上げたのは、それが先日の「席を譲らない若者」同様、現在の若者の一つの典型をそこに感じたからです。以前「右翼左翼」にかかる質問でも述べましたが、現在若者の保守化が叫ばれていますが、若者は保守化しているのではなく単に「革新勢力に絶望し、行き所を失っている」のだと思います。