「座談会」読みました♪

論座」9月号にて、近藤社長西村博之さん(2ちゃんねる管理人)・小林弘人さんを迎えた座談会があり、特に前二者のカラーの違いと、その予言的な発言の数々に痺れました。久々にいい座談会を読んだなあ……、という感想です。以下、一人一人の名言とコメントを。これを読めばみんな本屋に走りたくなること請け合いですよ♪
なお、「遠藤」氏は学習院大教授で座談会の司会役です。
冒頭、

(日本のPC人口分布は、年齢が低い程普及率が高い外国と違って、10代は低く、20代以上は50%程度で推移、という調査結果を受けて)
西村 20代もですか?
遠藤 30代後半から40代が最も高くて、20代はそれほど高くない。もちろん携帯電話の利用者を加えれば別ですが。
西村 「おっさんメディア」なんですね。

初っぱな、ひろゆきさんの重いジャブが炸裂。IT=時代の先端若者メディアというありがちな認識をひっくり返す結果を、挑発的な言葉でまとめてみせるセンスはさすが。
座談会自体も、ひろゆきさんに対して「過激な発言期待」というキャラづけで流れていく。このあたりの流れのコントロールは、やはりセンスの問題でしょうか。続けてひろゆき語録

(新しい「何か」を開発するフットワークの軽さについて聞かれて)
西村 とりあえず法務リスクや消費者リスクは後回しにして、やりたいことを先にやっちゃえ、という。
遠藤 でも、当然リスクによって失敗する人はたくさんいますよ。
西村 リスクがあるように見せかけておいて、やってみたら、実はそんなにリスクはなかったね的なことの方が、世の中多い気がする。

……「やってみた」人間が言うのでなければ、これほど軽い台詞はないでしょう。おいそれと言える台詞じゃない。
続けてひろゆき語録、ひろゆきが「はてな」を評して。

(学生時代〜起業の頃を聞かれて)
遠藤 幅広く本をお読みになったとか?
近藤 いや、地球物理一筋でもなく、あまり勉強していなかったというか。*1 
遠藤 ああ、自転車一筋。(笑い)
西村 「はてな」のサービスは、何となく自転車屋さんらしさが出ていると思います(笑い)。無駄なものをそぎ落としたデザインで、女の子受け狙いのきゃぴきゃぴした感じはない。

……この話の流れでこの台詞がぽっと出てくるということは、多分普段から「はてな」の本質としてのシンプルさを掴んでたということでしょうね。そして、このあと「はてな」のシンプルさについての近藤社長の名言来ます。

近藤 とっつきにくいから、いいかげん(ユーザー向けの)説明を増やしなさいと言われることもあります。でも、コップに「ここに口をつけて飲んでください」とか書いてあったら嫌じゃないですか。

仰るとおりです。社長!……って太鼓持ちですか私は(笑)。
もっとも、全体に「座談会」みたいな乱戦の場所では、名言というよりも自分のポリシーの丁寧な解説に終始する近藤社長はおとなしい印象に見えました。それに対してひろゆきさんが飛ばす飛ばす。

(インターネットにおける動画発信には可能性が低い、というひろゆきの意見に対し)
遠藤 でも、30秒くらいのウェブ用の映像制作がアメリカではやってますよね。
西村 面白いのは1万本に10本ですよ。

この約分しないリアリティがいいですね。0.001%を「千本に一本」というとなんか根拠のない数字っぽく見える。「一万本に十本」と言われると、実際に一万本見たんではないか、と感じさせます(また、実際に見てるかもしれない、と思えるところが彼の底知れない所ですね)。こういう言葉がいい。で、続けて名言。

遠藤 「2ちゃんねる」は動画化しないと?
西村 たぶんそうはならないでしょう。新聞から文字がなくならないように、たぶん情報を洗練させていくと、最終的には文字に落ち着きます。

まず、「情報の洗練=テキスト形式」というのは私も非常に同感です。座談会の中でこんなシャープな形で言える自信は全然無いですけど。また、そのクリアな見通しがあった上で、なおかつそれを「たぶんそうはならないでしょう」と表現しているところがこの人の面白いところですね。そこまで『見えて』いるのに、完全に他人事のように喋る。ホントにこれがこの人の素なんでしょうね。

続いて、お待たせしました(誰を?)。近藤社長ひろゆきさんの「ブログ談義」です。この二人が「ブログ」の未来を語りますよ!……の前に、それぞれのブログについて。
まずはひろゆきさんから。

遠藤 西村さんもブログ*2を書いてますよね。
西村 仕事で書けと言われたからですね。
遠藤 え、原稿料が入るの?
西村 はい。やりたいわけじゃなくて。
小林 仕事じゃないとやらなそう(笑い)。
西村 頼まれて引き受けたらやりますよ。

なんだか、普通に真面目に答えてるのに全然真面目に見えない所が面白いですね。
次に近藤社長

近藤 僕は*3、書いててちょっと恥ずかしい感覚がありますね。大した会社でもないのに「社長のブログ一覧」みたいに紹介されると、恥ずかしくないものを書こうとする。すると書けなくなるもので、それを考えないようにして書こうとか思ったり。気を使います。*4
西村 読者を意識してますね。
近藤 しませんか?

社長…、ここ、軽くマジ切れですか?(^^;)大丈夫ですか?ちょっとハラハラしました。ひろゆきさんと気が合わなそうに見えます、危険です。

でも、二人の「時代を読む感覚の鋭さ」にはやはり共通なものがあると思います。例えばこの後の発言、

近藤 だからブログを書くにはある種の自信が必要な気がします。強い人が書くメディアかもしれない。

ブロガーの「ある種の強さ」(これ、決して単なる賞め言葉じゃないですね)に触れる近藤社長の言葉を受けて、ひろゆきさんの

西村 ブログには敷居があって、やっている人同士でわかり合う、みたいなところがありませんか。掲示板だと、書いてる人と見るだけの人という区別はあまりなかったのが、ブログでは、コメント相手がブログを持っていたら反応するけど、持っていなかったら無視する、みたいな。

「ブロガー意識」批判、が、なかなか痛烈だと思いました。意外にも、社長も含めて「ブログ万歳」という方向に話がいかないところを面白く感じました。

このあとも長々座談会は続きますが、以下印象的な所だけを抜粋。

西村 海外のブログで、ウェブ日記を書く人はたいてい精神的に問題があるという意見が話題になりました。(中略)(日本では)ブログで抑圧された何かを解放しなきゃいけない人が、総務省によると300万人ぐらいいるということですね。
近藤 全員がそうかどうかは……。(笑い)

西村 知的財産権は、あと10年くらいで問題じゃなくなりますよ。WTO未加盟の国のサイトが、勝手に人気映画を売る。そのサイトがつぶれたら、別のサイトをつくって、また売る。サイトさえつくれば世界中で売れるし、その映画を売った200円とか数百円で1ヶ月生活できるという人がたくさんいる。時間の問題だと思います。

近藤 (様々なフリーソフトを初めとした、ネット上の『タダ乗り』文化について)道具はタダだけれども、その上で何をするのかと問われるというのは、人間っぽくていいなあという気がします。
(中略)
西村 (ニュー速VIPは)「はてなブックマーク」みたいに「このブログ面白いよ」とブックマークする人が大勢いるから「ここは面白い」となる。人間の手を介しているから信用できるわけです。

……などなど。やはり、この二人、肌合いは違うけれども、見ている世界は似ている気がします。本当に面白い座談会だったので、まだ見ていない人は割とオススメです。

*1:正直だなあ(笑)

*2:元祖しゃちょう日記

*3:スタッフ日記

*4:ほんと正直だなあ……(笑)