出版社の賃金は高いそうだ

MynewsJapan 講談社の異常賃金
編集部社員(28)の源泉徴収票を掲載してるのは凄いと思う。で、こういう「マスコミ」の方々が、半分以下の給与で世界一の激務をこなしている公務員を叩いていた*1というわけだと知ると、確かにいささか義憤が湧いてこないでもない。
しかしねぇ。なんかこう「高い所にいる人間をひきずりおろせ」という口調がとても気になる。いや、気にならない人は気にならないのだろうけど、私は気になって仕方ない。そういう「下で足の引っ張り合いをする発想」自体がそもそも好きじゃないのだけど、それ以上にいやなのは、それが一番便利な人心操作術だからだ。要するに「高い人間をひきずりおろせ」と主張している人間は、「私は庶民の味方です」といわんばかりだが、知ってか知らずか実質は、庶民をコントロールする人のお先棒を担いでせっせと管理統治の網の目を広げているに過ぎないからだ。その意味でそういう行為はやはり「卑しい行為」だと考え、厳に慎むべき発想なのだと思う。
労働者は、労働力を給与と取引している一事業主である。自らの賃金が不当に安いと思うなら、自らの雇い主と闘うべきであって、となりにいる労働者を叩いて何の利益があるか、ということに気付かなくてはならない。たとえばリンク先の記事を書いた人は、この記事が「出版社の賃金引き下げ」に役立ったとして、それが「出版物の価格下げ」につながると信じているのだとしたらおめでたい。事実は「会社の利益の増大」につながるだけであろう。それよりは、「組合を通して、出版社がこれだけ貰っているという事例をもとに、自社の賃金をひきあげる材料にせよ」と訴えるべきなのにそれをしないどころか、勘違いにも出版社の労組を批判したりしている…分からずにやっているとしたら愚かすぎるし分かってやっているとしたら悪質な御用メディアもきわまれりという感じだ。まあ多分前者なんだろうけど。
困ったものである。

*1:「公務員+多い」で検索してみると良い。ちなみにリンク先は、「公的外郭団体」の人数までふくめた各国比較を行っており、かなり中立的な比較をしていると思う。これに「公的サービスのレベル」を加味して考えればカンペキだと思うが。