名実共に「居酒屋オヤジの放言コーナー」ワタミ社長吠える

 私は思います。本来、「公」の仕事は「民」のためにあるものだ。ならば「官」任せにせず、「民」が自らの力で、「公」の仕事にかかわっていくべきではないか、と。


 では、「官」になくて「民」にあるのは、なんでしょうか。


 それは、「経営」です。

「民」になくて「官」にあるものは、なんでしょうか。


それは「やさしさ」です。


…と皮肉りたくなる。
謙虚さ、変化する状況への恐れと、変わらない安心や保護の提供。変化する時代に対応できずともすれば置き去りにされる弱者にさしのべる手。ワタミの社長には「『お金』という投票権を持つ有権者しか目に入ってはいないようですが、世の中にはその一票を持たず行使もできない人々が沢山いるのですよ。そして彼らを救えるのは「『市場』という選挙で選ばれた『経営者』という『民』の代表者」ではなくて、やはり「官」なのです。「あなたのお金が一票となって私を動かすのです」という声は、持っている者の耳にはさぞかし心地よく響くでしょう。それはそうです、哀れでか弱い「持たざる者」のことを考えなくて良い、と保証してくれるのですから。それはローレライの歌声のように甘美に響くでしょう。そして次々に水底に引きずり込まれると良い。要するにこの人は「医療も教育もコレ次第でっせ(指先で○をつくりながら)」と言ってるだけのことなんですから。

 いま、私立学校の半数が赤字経営です。病院では医療過誤が頻発しています。少子高齢化が進むというのに老人福祉サービスは一向に充実しません。日本の食料自給率は先進国で最低のパーセンテージです。

 私自身、実際に自分で学校や病院、老人ホームを経営するまでは、きちんとしたサービスを提供しながら黒字化するのはさぞや難しいのだろうな、と思っていました。ところがさにあらず、いざ参入してみると、自分で思っていた以上にすぐ黒字化を果たすことができたのです

 何が違うのか。繰り返し申し上げます。それは、私が外食産業でさんざんやってきた「経営」を行った。それだけなのです。

「黒字化」すれば良い学校であり病院であり老人ホームであるならば、「赤字」要員になりそうな生徒も患者も老人もどしどし放り出せば良いでしょうね。簡単なことです。「黒字」になる人だけ残せば良いのです。簡単なこと。それが「学校経営」であり「病院経営」であり「老人ホーム経営」だと言いたいなら言えばいいです。しかしそんな学校、病院、老人ホームが「人を幸せにしている」とは本来口が裂けても言えるはずありません。ましてそういうことをしている人間が、どこにも引き受け手がない『赤字要員』たちを半ばボランティアで面倒を見ている「官」という組織を「『経営』がなっていませんね」と鼻で笑う図式には、言葉もありません。少しは恥を知ってください。

 よく勘違いされるのですが、私はいわゆる市場原理主義者ではありません。市場経済は、人間が幸せになるための手段にすぎない。市場原理が当てはまらない問題、市場原理だけで解決できない問題はいっぱいあります。
 たとえば私がすでに参入している日本の農業の再生は、耕地面積や人件費や土地のコストを考えれば、何らかの公的援助を施さない限り、世界市場で競争するのは難しい。また、人間の経済が生み出した負の遺産である地球環境問題の解決にいたっては、行き過ぎた市場経済にブレーキをかける必要があります。「官」がやるべき仕事は、こうした枠組みをつくり、国民に成り代わって市場に不公正がないか監視すること、そして社会全体を見渡して不幸な人ができないようなセーフティーネットを設けることでしょう。

要するに、自分の学校が排除した生徒を受け入れるために公立学校が、自分の病院が放りだした患者の為に公立病院が、そして養えない老人のために公営の老人ホームがある、ということですか。自分の適当な「経営」が排除していった矛盾を「官」に押しつけて、「民は官よりも偉い」ですか。


これが、たまたま居酒屋で隣り合ったオヤジが調子にのって放言している、というだけなら腹も立ちませんが、たまたま居酒屋で儲けたせいで調子にのって政府の委員をして、某前首相が敷いたなんでも改革路線の尻馬に乗って、この国のシステムを刻一刻と破壊しようとしている現状を考えると、とても笑えません。こんなオヤジに発言権を与えたのは、一体誰?*1

「もう国には頼らない」ワタミ社長渡邊美樹

*1:答:安倍首相です。