コッケイな話

彼が部落地域に住んでいるだけで両親から結婚を反対されています。
「たまたま引っ越してきて同和地区に住んでいるだけ」の相手との結婚に反対する「差別心の強い」両親を、どう説得したらいいでしょう、という御相談ですが、どう考えても無理です。本当にありがとうございました。



と、いきなり切って捨ててますけど、仕方ない。だって馬鹿馬鹿しい話じゃないですか。この娘は、彼のことを同和地区に住んでいるだけであって同和の人ではないということを、自分の論拠にしてるわけでしょ。それって、彼が同和の人であればそれだけを理由に結婚対象にしないと言ってるも同然なわけで、この親にしてこの子あり、つーか。この相談者自身が、どうみてもまず同和地区出身者を差別してるわけで、親にしてもそんな差別者から「あんたは差別者だ」とか言われても何言ってんですかあんた、みたいで何の説得力もない、どころか、娘の世代でも依然として社会的差別が連綿と受け継がれている様を目の当たりにして、ますます己の確信を深めること請け合いでしょ。



両親を説得する方法? 結局、相談者自身が変わらないと、無理でしょう。回答者も、そろいもそろって似た様な人々ですけど。*1



この話のバカバカしいところは、結局(彼の話が正しかったとすれば)、部落出身者が誰一人関係しないところで、ただ差別心だけが暴走して、複数の人を傷つけつつある、という点。魔女裁判の如き集団ヒステリー、みたいな。まあまあちょっと落ち着いてごらん、君ら。何に脅えてるんですか、一体。何から何を守りたくて、どうなりたくて、そして何がしたいの? 子どもを危険から守りたい?幸せになりたい?大切に思える人と、互いに敬い、尊重し合い、愛し合って生きたい? 全部失おうとしてるじゃん、君ら。 何考えてんの? バカなの?




結局、差別する心はその人自身を不幸にする、という、その非常に不幸な実証例となっている。差別に立ち向かう知識と人生観と強い意志というヤツは、やっぱり誰にとっても必要なものなんだよ*2。「差別なんて過去のこと、あるいは自分は差別なんてしないから関係ない」ではない。人権教育、同和教育というものの価値をバカにしちゃいけません。でないと、いつかしっぺ返しを食らう。このことは、忘れちゃいけない。幸せになるためには。

*1:ちなみに、だからといって単純に差別者を否定すれば済む、とももちろん思わない。とあるところで聞いた話。ある家の娘が部落出身者と結婚すると聞いて、烈火の如く怒って一番反対したバリバリの差別者であった親戚のおばさんは、実は部落出身者だった、という逸話。そのおばさんにしてみれば、自分が必死に振り捨ててきた「忌むべき(と彼女が思っていた)」出自がそんな形で再び自分にまとわりついてくるなんて…という、恐怖と絶望の極地だったのだろう。こういった問題において、差別者と被差別者は、時に複雑に絡み合った一体を成していることもある。

*2:現在の『いわゆるジンケンキョーイク』ってのは、残念ながらそんなこと教えてないしそんな力を育てても無い、という批判はそれなりに正当だと思う。