「世界の総体は『正しい』のか?」に対するjo_30的追補

たとえば「空気嫁競争(2ch発日本的web文化)はweb2.0に相反する」という意見などを踏まえてこの問題を考えているこちらなど、ちょっと面白く感じました。。もともと梅田さんのエントリ(総表現社会と村上春樹の言葉)でコメントを述べたことからの関連で、少し考えてみます。同エントリのコメント欄を一読してから読まれると分かりやすいかも。
空気嫁批判」は、そもそも『tihnk or die』さんという人がこのコメント欄で述べている「日本的な『空気』尊重の考え方は全体主義と一脈相通じる胡散臭さを漂わせている」という批判に繋がっていると考えられます。それは、「西洋型の『主体(Subject)』を確立し得なかった日本型社会の問題点(たとえば天皇制に象徴されるような)」というような問題意識の有り様と同根なはずで、実はweb2.0がどうこう以前よりずっと古くから提起されている「日本型社会の問題点」と言われるものだと思います。曰く、近代市民社会というのは自立した個人と個人のぶつかりあいから生まれるものであって、それを概念形式として輸入したに過ぎない日本には真の個人は存在せず従って真の市民社会が日本には存在しない…官僚主義、政治の腐敗、談合、コネ社会などはそれらの問題が生み出した物だとするような考え方です。しかしそれらは「市民社会」が成熟しているはずの国でなお官僚政治や政治の腐敗、談合やコネ社会が存在している事実を説明しないという意味では中途半端な問題提起と言わざるを得ません。それらが存在している理由を「近代の中の前近代性」のような言い方に帰着させてしまって、「真の近代社会であればそれらの問題は解決されうるのだ」と言い切ってしまうなら、残念ながらその人の考える「真の近代社会」は人間の住みうる社会ではなく単なる理想郷に過ぎないのでしょう。あるいはそういう「近代社会」モデルは現実の人間社会を十全に説明し(それを元に現実の社会を構築し)得るモデルではないということでしょう。談合にしろコネ社会にしろ官僚主義政治にしろ、それらが存在する理由はただ一つ、所謂「真の近代社会」モデルよりもそれらの方が「まだマシ」な社会モデルであり、現実の我々がそれ以上にマシなモデルを持ち得ていないということでしょう。分かりやすく言えば、
談合が横行するのは、市場原理主義が配分するよりも結局談合の方が『まだマシな』配分を行い得るモデルだと多くの人に考えられているからです。そしてコネ社会が横行するのは、実力主義採用よりも結局コネ社会の方が『まだマシな』人事採用を行いうるやり方だと多くの人が考えているからで、官僚政治が続くのは、結局市民社会とやらが選ぶ代表よりも官僚制度が選び出すリーダーの方が現実的には有能だと多くの人が考えているからです。
その意味で、私は梅田氏や村上氏の「世界の総体は『正しい』」という意見を大きく捉えたderamcastさんの「総意抽出論」やheyさんの「確率論」を元にした話に説得力を感じました。なお付け加えて言うと、私の(あの時点の)意見はフラクタル論というよりはそこから「何かが立ち上がって来るということ」に触れたという意味では一頃流行った「オートポイエーシス(自己組織化)論」をイメージしたような気がします。もちろんそれは、私が「梅田さんや村上さんが感じたのはそういうイメージだろうか?」と思った、ということであって、私が世界をどう捉えているかというのはまた別問題ですが。
あと、補足ですがこちらなど眺めながら思ったのですが、よく「無責任だ」「ユーザーの自治に任せると言いながら管理を放棄している」「もうはてなは終わりだ」とか一部で激しく攻撃されつつもなんとなく流れている「はてな」の運営こそは、まさに「誤解(勝手なことを言う一人一人のユーザー)がたくさん集まればそこに理解(それなりに合理的なサイト)が立ち上がる」という精神の実践ですよね。そういう狙いなんだろうな、と私は勝手に思っているのですが。

(追記 5/8 18:00)
「みんな」の意見は案外正しい

集団の知恵がはたらく賢い集団の4要件

1 意見の多様性(各人が独自の私的情報を多少なりとも持っている)
2 独立性(他者の考えに左右されない)
3 分散性(身近な情報に特化し、それを利用できる)
4 集約性(個々人の意見を集約して集団の一つの判断にするメカニズムの存在)

というあたりをみると、どうやらこのエントリの話と結びつきそう。「多様性を排除しない」ことが「はてな」の正しさの一つの担保だと考えれば。

私がこの本を読んで思ったのは「集団の知恵」方式は、参加型であり、より多くの人が決定プロセスに関与することができて「楽しい」ということ。その楽しさに決定と行動を結びつけるヒントが隠されているのではないか

この「楽しさ」は、以前はてなの未来像について語った時「更新され続けるメンバー」について語った問題とも関連する気がする。風通し良く、人が次々と出入りするサイトとは、要するに「楽しいサイト」なのだから。…というわけで、メモしておく。