この道やゆく人も無し…

それは秋の暮れ。
なにはともあれ年の暮れだ。今日は晴れ上がって気持ちの良い冬の一日だった。昼過ぎにおせち料理用のみりんが切れていたとのことで買い物に出た。
わが自宅の裏には山がある。もともと古い寮か何かが建っていた敷地に立て替えたマンションだから、崖崩れとか地盤の心配とかは少ない場所で気に入っているが、新築のマンションというのはやはり環境的には異物なのだろう。周囲の住宅からの風当たりも強かったように聞いている。まあ彼らは表立って言ってくるほど常識がないわけではないので別に構わない。が、最近「元々ここはウチらが住んでたんだけどねっ!」と言いたげな態度で強く迫ってくる方々がいて、こちらには少し困っている。裏山に住んで居られるの方々である。
新築の頃にはさほどでもなかったのだが、昨年は蜘蛛が大発生して(コガネグモだと思う)夏から冬まで相当な大きさのヤツがあちこちに巣を作っていた。とくにわが駐車場の頭の上に巣を作っていたヤツは見応えがあった。とても手が届く高さではないし、別に実害があるわけではないので放置されていたが、冬を迎えるころには相当大型の蛾まで捕食する頑丈な巣をもつ巨大蜘蛛に成長していた。ある冬の朝、死んで落ちたのか落ちたから死んだのか、いずれにせよ駐車場に無惨な死骸をさらしていたのはそぞろに哀れであった。いや、気持ちは悪いのだが。
で、今年はなんとも得体の知れない生きもの……たとえて言えばブラックタイガーの胴体を持つゲジゲジと言った風貌の……いやあんまり気持ちが悪いので近寄ってみたわけではないし、そもそもそんな生きものがいるのかどうか余りにも気持ち悪いので調べる気にもなれなくて調べてないのだが……とりあえず脚を広げて大人の掌くらいはたっぷりあるようなのが駐車場の壁にぴたっと止まっていて、深夜に帰宅した私は「う゛ぇ…」とでも言うような声を腹から呻いたのであった。こいつはあとでもう一度見かけたが、脚が6本なのかそれ以上なのかもやはりよく分からなかった(気持ち悪いので1m半くらいが限界距離であったため)。触角のせいで脚が多く見えたのかもしれない。あんな生きものが自分の車の周囲数㍍のところをナワバリにして動き回っているというのは余りぞっとしない。そんなわけで今年は、車を出すたびに周囲を警戒しないといけない羽目に陥っている。
今日は同じ駐車場の壁に小さい蛾がいた。これは小指の爪の半分ほどの小さいやつで、小さいながら羽の両端が飛び出てちょっと昔のゲイラカイトのような形状と、黒白ながらまだらに複雑な模様をしているちょっと小粋な人だった。携帯で画像を撮ってみたけど、携帯にはマクロモードがないようで余りうまく撮れない。いずれにせよ天気は良いし、気分良くでかけてスーパーで買い物をしていると、鮨コーナーにこんなPOPがあって脱力した。
「魚河岸の鮨は舎利が違う!」
シャリ……舎利って……
色が白だけに想像しちゃうじゃんか…ill|il _| ̄|● ill|li 。物を知らないにも程があると思う。暴走族の嘘字の方が百倍マシ。辞書くらい引いて下さい、ホントお願いだから。