当ブログでは選挙記事を自粛

……していたわけではなくて、インターネット環境の無い所に3日ほど缶詰になっていました。激風の選挙戦を暴風圏外から眺めていたような感じです。


まあ、最近「戦後処理」を宣言している当ブログとしては現在の政治状況に対して発言することにはそんなに前向きではありません。id:yasukanaさんと議論していた一昨年が懐かしく思われる位です。私の最近の関心はもっぱら「言葉のつかいかた」にあります。


たとえば
安倍首相、赤城農水相の更迭固める


昨夜から「政治日程をよくみて熟慮断行」とか相撲取りの昇進挨拶みたいな奇怪な四字熟語を並べていた安倍首相ですが、周辺の声によれば

安倍晋三首相は1日、赤城徳彦農水相を更迭する方針を固めた。首相周辺が明らかにした。
 自民党内から赤城氏の更迭を求める声が挙がっていることに加え、現職閣僚の不祥事や失言が相次いだことが参院選大敗の要因になったとみて、人心一新が必要と判断したようだ。

とのことです。そして相変わらずここには安倍晋三のコトバがすっぽり欠落しています。今回の選挙で信を得られなかったのはまさしくそこだと私は思うのですが。つまり、原因は年金問題そのものでも大臣の自殺でも不祥事でもなく、安倍晋三がそれらに対しどんなメッセージも国民に伝えられなかったということです。TVに出れば出るほどその「何も言ってなさ度合い」が国民に伝わり、露出すればするほど不人気になる……そこに安倍首相の失敗がありました。


ただしそれは彼個人の問題というよりは、本来「首相という責任ある立場」「適当な発言一つで国が傾きかねない立場」でメディア戦略を行うことがいかに難しいかということなのです。人気取りに適当なことを一言言ったり不用意なことをしたりすれば大変なことになる……だから首相や大臣というのは本来、よほど周到に準備するのでない限り、頻繁にメディア露出すべきではないのでしょう。前任者小泉のせいで官邸周辺はその辺りを完全に見誤ったようです。小泉氏は確かに希有の変人であり、分かりやすく言えば生まれついての扇動政治家でした。未だに忘れがたい彼の一言「この程度の約束(自民党三つの公約)は守れなくても大したことない!」…こんなことを国会答弁で言うなんて、安倍首相でなくても普通の政治家には不可能です。ましてそれで首相の座を逐われることなく生き延びるとは。彼はコトバの意味を限りなく軽く無意味にし、空気を読んで空気を利用する能力の高さ、そして自分への不信を逆手にとってメディア戦略に利用できるほどの顔の皮の厚さを兼ね備えた稀代の奇人でした。もちろんそれらは政治家に多少なりとも必要な能力ではあるのでしょうし政治家は結果にのみ責任を負うべきなのかもしれませんから、崩れかけていた自民党への支持を広範囲に拡げ高めたという意味では自民党政治史において小泉氏は中興の祖なのかもしれません。ただし、政治家のモラルに対する国民の期待を破壊しつくしたという意味では、現在の安倍内閣に顕著にみられる政治家モラル崩壊の元凶となった人間でもあるという点も忘れるべきではないと思います。


安倍首相は赤城農相更迭に際し、その理由をなんと説明するつもりなのでしょうか?


「政治とカネの問題を明らかにしなかったこと」?…彼自身も言っていたように、その時点の法律には違反していなかったのですよ。それに問題があるとすればなぜ登用したのでしょうか。登用した人間の任命責任は?
「問題に誠実に向き合わず、政治に対する国民の信頼を失墜させたこと」?……(何も喋るな、と釘を刺したのは官邸周辺なんじゃないかと思いますが)それにしてもそれならどうして選挙前に更迭しなかったのでしょう?本当に悪いことだと思っているなら、なぜ選挙前に「公開するか辞任せよ」と首相は指導力を発揮しなかったのでしょうか。
参院選の結果、国民の審判が下ったと判断して」?…ならお前がまず辞めろ、話はそれからだ、と言われるでしょう。


というわけで、私が赤城大臣ならとてもじゃないですが納得できませんね。選挙前に赤城大臣の事務所費問題を選挙に政治的に利用していると散々批判していたのは自民党の方々だったと思いますが、まともな理由無しに赤城大臣の首を切ろうとしている官邸周辺のこの動きは、それこそ赤城大臣の件を選挙の為に政治的に利用することそのものです。この件についてもまだ同じような官僚作文リフレイン棒読みしかできない首相なら、国民は完全に彼を見限るんじゃないでしょうか。赤城大臣更迭は、安倍内閣崩壊へのワンステップになるような気がします。


(追記1)
…と、ニュースを受けて書いた直後に追加ニュースが!!!!!
<赤城農相辞任>事務所費問題や参院選惨敗への影響で引責

赤城徳彦農相(衆院茨城1区)は1日、首相官邸安倍晋三首相をたずね、政治団体の事務所費をめぐる問題や参院選惨敗に影響した責任を取り辞表を提出、首相もこれを受理した。事務所費など不自然な支出を指摘され続けながら、潔白を証明する領収書の公表を拒み続けた赤城氏だが、参院選での自民惨敗の要因となり与党からも辞任論が出ており、首相も事実上の更迭を判断したとみられる。赤城氏を擁護して参院選を戦った首相にとって後手に回った形での辞任は打撃であり、大きな失点となった。
 赤城氏は首相官邸で記者団に辞任の理由について「(自分のことが)選挙戦に影響を与え、与党の敗北の一因となったことはまぎれもない事実で、大変申し訳なく思う」と語った。

……
要するに、分かりやすく言えばまた自殺で片を付けたわけでとんだ自殺内閣ですね。部下の首くらいきちんと自らの責任において切ってやれよ……と。結局安倍氏への責任波及をおそれて赤城大臣が自ら辞めた(おそらく辞めさせられた)だけじゃないですか。そういう所を若手は見てます。そんなだからリーダーシップがないとか器じゃないとか言われるんですよ。


(追記2)
選挙大敗の結果を受けて安倍首相は「責任は全て私にある」「我が政権の政策は大筋で理解されていると認識しているから、政権は続行」と一見矛盾するコメントを出しています。この言葉にどういう解釈が可能でしょうか?「私は間違っていないが結果は悪かった」というコメントを最大限好意的に解釈すると、その答は次のいずれかではないかと推測されます。


「(政策は正しかったけど)宣伝が失敗した = 無能な宣伝担当を雇ったボクちゃんの責任です、ごめんね。」
「(政策は正しく、宣伝も頑張ったが)国民がアホやった = アホな国民のレベルを読み切れなかったボクちゃんの責任です、ごめんね。」



以上から読み取ると安倍首相本人は全く反省していないということになりますね。本当に、何気ない言葉の端々にその人の本音は透けて見えるものです。


とりあえず、国民の眼も厳しくなってきた昨今ですから、TOPにはもう少し考えて発言出来る人を据えた方が良いんじゃないかと私は思いますが、上の追記から考えるともう駄目なんでしょうかね。

(追記2)
江川紹子ジャーナルに、結構過激な記事が……。