「わたしが死んだらびっくりする」

つくばの男性が1億円寄付(Yahoo!ニュース)

今年3月に87歳で亡くなったつくば市出身の男性が、遺言により同市社会福祉協議会(久保田尚勇会長)に約1億円を寄付した。これを受け、同協議会は3日、親族に感謝状を贈呈した。
 寄付したのは故・皆川重兵衛さん。生前、資産を銀行に託し、死後、銀行を通じて同協議会に大金が寄付された。
 皆川さんは大正8年、旧田井村(現つくば市)の生まれ。父が眼科医という裕福な家庭で育ったが、戦後の混乱や病気による父の医師廃業で一度は、資産を失った。その後は、日用品やお茶などの行商をしながら両親と3人で倹約生活を送り、蓄財したという。

偉いとか立派とか真似できない…とかいろいろな感想はあるでしょうが、私は単純にここまで人生を楽しんだということを素直に尊敬します。一度資産を失い、行商をしながら倹約生活でお金を貯めながら……いつから彼はそのお金を「寄付する」という考えを持ち始めていたのでしょうか。


最初は別な目標があったのかもしれない。不意の病気や怪我に備えるためであったかもしれない。でも、あるときある瞬間に「そんなものいらない」と気づいてから、彼の人生は違った色に回り始めたのではないでしょうか。自分のためでなく他人のために、そして直接ほめられることもお礼を言われることもない状況で、自分の人生を誰かに捧げることを人生の目的にすること。それはきっとものすごく爽やかで楽しい人生だったのではないでしょうか。寄付というその行為でなく、そこに向かって人生の全てをくみ上げるという行為が彼は楽しかったのだと思います。


それにしても、彼にこんなことを思いつかせたのは何だったのでしょう。子どもの頃にそういう話を読んだりした?あるいは誰かの話を聞いて?時には挫けそうになったり無意味なことをしていると思ったりすることもあったかもしれません。そんなとき彼を支えたのは何だったのか?……今となっては分からないことばかりです。


別に善意であったかどうかも分からない、単に使い道を思いつかない発想の貧困に過ぎなかったのかもしれない、それでも、寄付をきめてからの彼の人生がとても楽しい物だったろうことは想像がつきます。


人生を楽しんだ偉大な先人に、素直に敬意を表したいと思います。


(追記)
遺言状に「つくば市の老人や貧困者、孤児などの救済と社会福祉の向上に役立ててください」とあったと言います。ですが、多分その具体的な内容自体は後付けだったのではないかと想像します。また、蛇足ながら金額の大小の問題でもありません。