保安院のオシゴト

ヤフーを通じて広がりホッテントリでも話題沸騰の保安院の話だけれど、

 東電福島第一原発から約6キロ離れた福島県浪江町で3月12日朝、核燃料が1000度以上の高温になったことを示す放射性物質が検出されていたことが分かった。

 経済産業省原子力安全・保安院が3日、発表した。検出された物質は「テルル132」で、大気中のちりに含まれていた。原発から約38キロ離れた同県川俣町では3月15日、雑草から1キロ・グラム当たり123万ベクレルと高濃度の放射性ヨウ素131も検出されていた。

 事故発生から2か月以上たっての公表で、保安院の西山英彦審議官は「隠す意図はなかったが、国民に示すという発想がなかった。反省したい」と釈明した。
(読売記事へのリンク)
(同魚拓)

の太字部分の発言が記事の要で、そりゃ即座に反応しそうなフレーズではあるのだけど、調べているうちにちょっと微妙な気分に。



なぜなら、保安院は行政の一部分であって、事業者ではないのだから、原子力災害対策特別措置法の、いわゆる「通報義務」が課せられる対象ではないし、今回の調査内容は、事業者とは別個に「国の機関」として行った調査なのだろうから、そもそも「国に対して通報する」ことではない(「国」は通報を受ける側なのだから)。



でも、公的な機関として「国民」にそれを知らせる義務はもちろんあるだろう…それはそうだ。だが、その時期や方法について厳格な規定があるわけではない。ならば、少なくも「国民の代表(という立場で行政のトップに立つ人)」に情報が即時に届いてさえいたならば、我々はそれでよしとすべきではないのか。
でもって、その場合、その情報を公開するかしないかの判断・責任はその「国民の代表」の方にあるわけであって、安全・保安院にはない。安全・保安院がむしろ勝手に「国民のみなさんにお知らせする必要があると判断しましたのでー」と、内閣や官邸に連絡せず記者会見をやったとしたら、場合によっては混乱を引き起こしてマズいこともあるだろうし、保安院もそのことの責任は取り切れまい。少なくとも、上に言う「隠したわけではない」「国民に示すという発想がなかった」とは、そういうことを指しているのではないのか。そして、それって結構当たり前のコトだろうと思うのだが。
とりあえず、読売の記者は、これを書く前に「隠していないということは、情報はきちんと官邸にあがっていたということか?」と質問したり調べたりしたのか?もし、官邸に報告をあげていなかっとしたら、まずそれを書くべきだし、そのことの意図・責任の所在や、対応の妥当性を批判・批判すべきだろうと思うのだが、いかがだろうか。「国民に示すという発想がない」ということが、イコール、このことについて、保安院がマスコミを集めて会見を開くという手続きがなかったという程度のことについてのニュースなのだとしたら、それは割とどうでもいい部類のことに属すると思うのだが。



もし、そういう考察をすっ飛ばして「国民=メディア」のような意味合いで鼻息荒く上の記事が書かれたのだとしたら、この記事のタイトルはいささか…というか「かなり」悪意あるモノと言わなければならない。*1ブックマークの反応を見る限り、釣られている人はかなり多い。問題は保安院でなく官邸にあるのではないのか。

*1:もし、官邸の責任を覆い隠す意図で、そこを質問していないのだとしたら、悪意どころか完全に悪だ。