200年間大切にされていたもの

「若冲の羅漢」無残 伏見・石峰寺 30体倒され

江戸時代中期の画家伊藤若冲(1716−1800)ゆかりの京都市伏見区の石峰寺(せきほうじ)の境内裏山で、若冲が下絵を描いて作らせた石像の地蔵菩薩(ぼさつ)約30体が倒され、うち5体が損壊していたことが24日までに分かった。同寺は伏見署に被害届を出し、同署は器物損壊容疑で調べている。市内で「若冲展」が開催中で多くのファンが同寺を訪れており、心ない行為に「若冲さんが泣く」と怒りの声を上げている。(リンク先より)

余りにも悲しいニュースです。言葉もない。


五百羅漢像は、彼の死後、200年間大切にされてきたものです。のんびりとした伏見の丘の上で守られてきたものです。それを同じように大切に守っていくこともできないのが我々の生きている時代なのでしょうか? 共有財産を大切にできないとは、民度の低い話です。 とても悲しく、情けない。
以前、石峰寺を訪れた際のエントリにも書きましたが、100年かそこら、おそらくほどなくあの石像たちは石に還るでしょう。せめてそれまでの間、ひっそりと静かに時間を過ごさせてやりたい。「若冲展」の最中にこんな事件が起こるということがとりわけ悲しいです。犯人に対する怒りはありませんが、情けなさと哀れみを感じます。せめて名乗り出てくれると良いのですが。


(追記)
おとなり日記」を見ていて、こんな話を見かけた。
椿山荘の庭に若冲作の五百羅漢像がある
一瞬、上の落胆に輪を掛けて落胆しそうになったのだけど、この件について、このページを見ていると、どうやら大正14年という時代からして「移築」したのは藤田平太郎男爵だろう。で、この人についてざっとネットを見てみると、ただの成金とかそういうのではなく、明治時代に美術品のコレクターとして「藤田コレクション」を築き上げた藤田伝二郎男爵の息子で、著名な古美術コレクターなのだとか。
(参考:http://www.nikkei.co.jp/kansai/history/32371.html
そうなると、「移築」したのもむしろ「美術品保護」の発想だったのかもしれないし、少なくとも、騙して買いたたいたり、盗んだも同然な入手の仕方をしたりしたわけではないだろう。これは、特に問題と言うこともないのかもしれないと思ったので、追記してTBする次第。