成果主義批判

高橋伸夫さんという人の
できる社員は「やり過ごす」 (日経ビジネス人文庫)
虚妄の成果主義
これらの本がずいぶんと分かりやすく「成果主義」の問題点をピックアップしています。
簡単に説明すれば、

  1. 仕事に向かう動機(インセンティブ)は「やりがい」であって「報酬」ではない。よって「報酬」が増えればインセンティブが高まるというのは誤解である。
  2. 評価の「客観性」(マニュアル化)を求めると、逆に「評価すること」それ自体に対する責任が薄れてゆき、またそれを実現するための多大なコストは無視できない。
  3. 人材を育成するのではなく消費することになり、短期的には成果が上がっても長期的には副作用の方が大きい。

という三点が批判のキモかと思いました。また、その三点においていかに従来の「日本型人事システム」が力を入れていたか、ということを述べています。確かに、報われなくても企業の片隅で信念に基づき、黙々と新製品開発に取り組んで成功した人々をもてはやす「プロジェクトX」とかを賞賛してる一方で「成果主義」を推し進めるというのは矛盾ですよね。彼らの背後には無数の「失敗例」もあるわけで、それなしに成功も無いわけですから、成果主義を導入すれば無数の「失敗」とともに一握りの「成功」もドブに捨てることになるわけです。『成果主義の職場にプロジェクトXは生まれない』。

どうか、十年先の未来を考え、希望の持てる事業とそれを支える人材を育ててほしい。それに適したシステムは、成果主義ではない。日本型年功制の方なのだ。せめて若者が、日々の生活の不安におびえることなく、仕事に夢中になって取り組めるような日本型年功制的な環境作りを心がけてほしい。彼らに仕事の面白さを教えてやって欲しい。これは一大学教師としてのお願いである。(高橋伸夫『日本型年功制を生かせ』)

やはり日本に『狩猟採集型文化』はなじまない、結局我々は『農耕民族』だってことなんでしょうか……陳腐なマトメですけれども。